花組全国ツアー、仮面のロマネスク感想

見てきました、仮面のロマネスク。
とても大好きな演目なので、それだけ厳しい目での観劇となりました。
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全体的にあっさり?
まず何よりも、全国ツアー仕様のセットでは物足りない。
何を差し置いても主張したいのは「セットが簡略化されたシーンこそが、この作品の見せ場」だということ。それも主役の、です。
削られた演出の重要性
この作品では特に、ラブシーンでの盆回り・部屋の移動がシーンを切り替える大事なきっかけとなります。
今回、その際の動きや間が少なくなったことにより、場面全体がせこせこして足早な印象を受けました。
続く、ヴァルモンがセシルの部屋へ向かうシーンでは
- 「さあ、次はセシルだ」
- セシルの部屋の扉を確認
- 鍵が開いている
- ニヤッ
- 上着を脱ぎながら部屋へ侵入
ところが今回はセットの都合上、ヴァルモンが「次はセシルだ」と言いながら上着を脱ぐだけで、扉に手も掛けず暗転。
その前のシーンで子爵はセシルに「あとで(手紙を)取りに行くから、部屋の鍵は掛けないで」と伝えているわけですから、扉を開ける描写があると、なお一層引き立つ場面だと思うのです。
更にここは、ヴァルモンが自身の心に芽生えたトゥールベル夫人への恋心を自覚するシーンでもあります。
トゥールベル夫人への想いに「何かが違う」と言いながら「まあ、いっか!」と言わんばかりに、目の前の愉しみへ頭を切り替える。
たった数行のセリフ追加によりヴァルモンの快楽主義を観客へ印象付けた演出は相変わらず見事です(※1997年初演東京公演からの追加演出)。
だからこそ、要であるセシルの下りをもっとキツく演出して欲しく思いました。
人が少ない分、シーンもカット
娼婦が革命派の貴族に絡むシーンは人員の少なさでカットされたのでしょう。
宝塚の舞台として観るに、主役の見せ場を削ったのに比べれば、さくっと許容すべきことなのかもしれないです。
これに倣い、ヴァルモンがダンスニーに助言をした後も娼婦が通りすがりません。
ただこれはダンスニーの奥手さを演出するためのシーンだろうと解釈しているのと、芹香斗亜さんのダンスニーはその辺りが充分にハマっていたことから、削って全く問題なかったと思えます。
しかし娼婦云々を差し引いて、革命派貴族のやりとりカットに関しては首を傾げるところ。
物語全体の収束を考えたときにヴァルモンとメルトゥイユの別れにおいて絶対的な説得力が削られるからです。
尾を引く違和感
個人的に消化不良なのが、「修道院に入ったトゥールベルのところへアゾランを偵察に行かせたヴァルモン」です。
「ではなぜ、あの方の入っている修道院をアゾランが何度も訪れているのですか」
「それが気に入らなくて、こんな男を引き入れたっていうのか君は」
―1997年『仮面のロマネスク/ゴールデン・デイズ』東京公演プログラムより
トゥールベルに対して恋心を持ってしまったヴァルモンを表しているというのは理解できます。
ただ、ここでせっかく広げた恋心をを丸め切れないまま幕引きになるのがモヤっとするんです。
そもそもここの演出がどうであれ、口では捨てたと言いながら、トゥールベルが逃げた修道院へアゾランを偵察に行かせるほど未練があるのに、ラストで急にメルトゥイユへ「君がいたから生きていられた」などと言うヴァルモンには説得力を感じられないわけで。
革命により今生の別れを惜しむ場面であるということが理解できるだけに時代背景についての描写をカットしたのが最も影響するシーンです。
回収しきれない描写をするくらいなら、初演大劇場公演のように描写を省き、メルトゥイユからの一方的な嫉妬ということで片付けた方が、モヤモヤせずにラストを迎えられたのでは?
どうしてもそこまでトゥールベル夫人に惚れたということにするなら、劇場公演での演出そのままにしっかりと背景描写をすべきではないか、と思った次第です。
役者・芝居について
今回の上演は、宙組の再演からのキャラクター像を引き継いでいるようです。
以下は超個人的な感想ですが、正直なところ大空祐飛さんに合わせた演出では、明日海りおさんには女の影が薄過ぎます。
元々が爽やか系なみりおさんですが、『STUDIO54』のZ-BOY(ザック)は見事にハマっていたので、いわゆるワルい役は似合うと思います。では何故モヤッとしたのか?
役者に合わせた役作りを
今回の明日海ヴァルモンは徹底してクールを演じていたのだと思います。
そこまでは文句のつけようがないほど恰好良いのですが、いかんせん視線の使い方が弱いのが致命的でした。
クールなのは見て取れるのですが女を誑かす色事師としては表現力が足らなかった印象です。
仮面のロマネスクは役者の表情をもってして登場人物の「ウソ」を伝えなければならない作品なのに、これでは本末転倒気味です。
みりおさんには、高嶺ふぶきさんのヴァルモンのように、もう少し色濃い役作りの方がピッタリではないかなと思います。次回の全ツへ向けて期待の残るところです。
女性陣はバッチリ
一方で、花乃まりあさん演じるメルトゥイユ侯爵夫人は、気の強そうな佇まいが役にぴったりハマっていました。
そのメルトゥイユ邸に雇われている三人組は、初演再演よりますます光って見えました。全ツならではのご当地アドリブを担っていたからですね。
ジュリーちゃんも、芝居が巧くて可愛らしかったです。
続いて、仙名彩世のトゥールベル夫人。
歌も芝居も不満はありませんでした。巧かったです。次回のツアーでは番手が上がり、彼女はトップ娘役としてメルトゥイユ侯爵夫人を演じます。楽しみですね。
まとめ~次回に期待
この作品、再び全国ツアーで回ってきます。
何故間を空けず2年連続で再演されるのかといった疑問は置いておいて、演出周りを再考して欲しいです。特に時代背景についてはここでまたゴリ押しさせて頂きます。
ヴァルモンのキャラクターについてもたいへん気になるところです。彼女にはクールなヴァルモンより、高嶺ふぶきのヴァルモンのような表情豊かで朗らかな子爵の方が似合うでしょう。
ポスターの先行画像が出た際に騒がれていたように、気を抜くとアンドレに見えてしまいます。
ビジュアル的に軍服が似合う分、そこが一番もったいないです。
次回の全国ツアーもチケットが取れそうなので、再びじっくり拝見させて頂きます。
2017年の全ツも見てきました。
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